【映画】溺殺魔 セバスチャン・ドナー(ネタバレ感想)

映画『溺殺魔 セバスチャン・ドナー』のポスター
(C)RED ROOM 2 PRODUCTIONS INC. 2014
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作品の概要と感想(ネタバレあり)

映画『溺殺魔 セバスチャン・ドナー』のシーン
(C)RED ROOM 2 PRODUCTIONS INC. 2014

友人たちとパーティに参加したマディソンは、親友ハナから結婚式を手伝ってほしいと頼まれ承諾する。
しかしその直後、マディソンは不注意から湖に落ちて溺れ、それをきっかけに極度の水恐怖症になってしまう。
1年後、ハナの結婚式が行われるが、マディソンは雨を恐れて参加できない。
怒ったハナは友人たちとマディソンの水恐怖症を克服させるべく、心霊療法を受けさせるが──。

2014年製作、カナダの作品。
原題は『The Drownsman』。

「drown」が「溺れる、溺死する」といった意味なので、直訳は「溺死者」みたいな感じでしょうか。
「溺死させる」という意味合いもありますが、drownsmanで「溺死させる者」にはならないような。
いずれにせよ、「溺殺魔」という邦題は秀逸です
「溺殺」という造語が良いですね。

溺殺魔ことセバスチャン・ドナーの隠れ家(?)も良い雰囲気。
ゲームの『サイコブレイク』を思い出すようなソリッドでじめじめした空間、好きでした。
水が入ったケースに閉じ込められるのは、『ソウ』のゲームっぽくもあり。
テリトリーに連れ込んでから殺すところも、こだわりが感じられてザ・スラッシャーホラー感があり良かったです。
意識しているのかわかりませんが、セバスチャン・ドナーの写真は、チャールズ・マンソンの有名な写真にちょっと似ていたような。

しかし
そのあたりの設定やコンセプト的には良いのですが、作品全体としては、どうにもB級……を通り越してのC級感が否めませんでした
「コンセプトは悪くないのに!」で言うと、『ハングリー/湖畔の謝肉祭』あたりに近い感覚。
もう少し活かしようがあったのではないかと思えてなりません。
個人的にはこういったC級ホラーも楽しめてしまいますが、面白いか、おすすめできるかと言うと、同じようなお仲間にしかおすすめしづらい感じ。

何よりツッコミポイントが多すぎるのが難点ですね。
そのあたりは愛を込めて後半で触れるとして、一番引っかかってしまったのは肝心のセバスチャン・ドナーの存在と、その目的がよくわからなかった点でした
常識ではかろうとするのがそもそも間違っているのかもしれませんが、なぜ急にあんなモンスターになったのかがまず謎。
女性たちを連れ込むのも、水中での心音を聞きたかったのか、娘であるマディソンを手に入れたかったのか。
後者であるならなぜ友達を巻き込む必要があったのか。
モンスター化して自分でもよくわからないまま暴走していたのかもしれませんが、諸々設定の甘さは気になってしまいました。

水から出てくるという設定も良いですが、肝心の水を自分でコントロールできてしまうところはちょっと無敵に近く反則な気がしました
「水があればどこでも出てくる」という設定では、愛すべきお馬鹿度に振り切っている『ゴースト・シャーク』に軍配が上がります。

とはいえ、低予算っぽいながら頑張っており、やりたかったコンセプト的には伝わってくるので、個人的には応援したい気持ちもある作品。
ツッコミながら観てこそだと思うので、後半では諸々、そのあたりに触れておきたいと思います。

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もやもやを吹き飛ばせ!(ネタバレあり)

映画『溺殺魔 セバスチャン・ドナー』のポスター
(C)RED ROOM 2 PRODUCTIONS INC. 2014

何で敢えてそうなったん!?
と感じてしまうストーリーや演出が多い本作。

その筆頭は、やはり主人公たちの関係性でしょう。
「私たち……ズッ友だよ♡」的な、「親友」という表現が実に上滑りしているようにしか見えませんでした
よくこれまで仲良くやってこられていましたね。
1年も時間があったわけですし、あんなにひどい状態なら付添人は断った方が良かったでしょう。
ハナもハナで親友なら、雨が降ったら無理だろうと理解・覚悟しておくべきだったでしょう。
マディソンの言い分をまったく信じず、やらせの心霊パーティを開き、「あなたのためよ」と言いながら無理矢理バスタブに押しつけようとするハナたちの姿は、もはやいじめか虐待か。

しかし、当然浮かんでくる疑問としては、水すら飲めないマディソンは、お風呂はどうしていたのでしょう
1年間濡れタオルで拭いていたにしては小綺麗すぎましたし、そもそも濡れタオルが作れないでしょうし。
その辺、ずーっとハナたちのサポートを受けていたのであれば、それはそれでマディソンの身勝手な悲劇のヒロイン感も際立ってしまいます。

セバスチャン・ドナーは水があればどこからでも現れるファンタジックなモンスターでしたが、幽霊的な存在ではないので、キャスリンの呼びかけに応えてろうそくの火が消えたのも謎
コビーの頼みを受けて善意で協力しただけなのに、「あなたが押さえつけたの!?」「ゲームは終わりよ、出てって!」と責任を押しつけられて責め立てられるキャスリンもかわいそうすぎました。

あとこれは自分でも細かすぎるなと思うのですが、マディソンがヘンリー・ジェイコブス(娘をセバスチャン・ドナーに殺されてネットで情報収集していた男性)に電話をかけた際、耳に当てたスマホがちらっと見えましたが、完全にホーム画面でした
細かすぎますが、こういう細かいこだわり、大事だと思っちゃいます。

そんなヘンリー・ジェイコブスの家をマディソンたちが訪れましたが、いざ訪れてから「若い女性が何の用かな?」「溺殺魔の話を聞きたくて」「断る」と、昨日の電話ではいったい何を話してアポを取ったのかと思ってしまう会話。

イザベルとマディソンが母娘(そしてセバスチャン・ドナーが父親)というのは面白い設定でしたが、明かされたときのリアクションが全員薄めでいまいち盛り上がらず。
しかもイザベル、いざ生まれてからは娘のことは放っておいたんですかね。
病院から出してもらえなかったりお願いを聞いてもらえなかったり、危険はないと思っていたのかもしれませんが。

パニックになったイザベルの病室を去る際、マディソンが病室の鍵を盗んでいったのも謎といえば謎。
また話を聞きたいけれど普通にお見舞いに来てももう会わせてもらえないかも、と思ったのかもしれませんが、若干ラストシーンのために盗ませておいた感も否めず。

ハナがケースに閉じ込められて溺死したシーンは、マディソンの諦めが早すぎました
普通、最後まで諦めずに叩き割ろうとすることが多いですよね。
なぜかガラス越しに手のひらを合わせて、死を悼んだかと思いきや、ケースを破壊。
壊せるんかい!
それならそんな手を合わせている暇があったらもっと早く壊せていたら助かったかもしれないのに!


「セバスチャン・ドナーを近づけないために火をつけた」というのは半ばイザベルの妄想かと思っていましたが、まさかの本当に弱点でした
火に弱い説明もないというか、火と水が対極とはいえ、普通に考えれば水を操れればむしろ火には強いように思えます。

火力と持続力抜群の発煙筒もすごかったですが、何の躊躇いもなく発煙筒をセバスチャン・ドナーの身体にぶっ刺すマディソンの発想力もすごい
普通、火が弱点であっても発煙筒を身体に刺そうなんて思いませんよね。
しかも相手の身体が濡れていればなおさら。

「最後の呼吸が終わったら境界を超えられる」というのもまた謎と言えば謎。
それが死を意味するのだとすると、蓋もないバスタブに浸かって自ら溺死するというのは、無意識の生存本能的に到底無理でしょう
「肺に溜まった息を吐き切る」ぐらいなら可能そうですが。

最後の「実は生きていました」は完全に謎でしかありませんが、ホラー映画の定番を踏襲しただけと考えて良いでしょう。

あと気になったのは、セバスチャン・ドナーの隠れ家に連れ込まれた人たちがみんなほかほか湯気が立っていたこと。
水の中から出てしばらく経ってもほかほかしていたので、お湯がめちゃくちゃ熱かったのか部屋がめちゃくちゃ寒かったのかのいずれかと思いますが、みんな特に熱がる様子も寒がる様子もなく。
連れ込まれた時点で死んでいた、ということかもしれませんが。

ちなみに、友人のローレンが死んだときには、飲んだ水を吐き出し、その水にスマホが吸い込まれました。
あらゆる水を操れるのだとすれば、身体の半分以上が水分でできている人間は……と、これ以上はやめておきましょう。

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