【映画】元カノ Death(ネタバレ感想・考察)

映画『元カノ Death』
(C)2010 RS Public Company Limited All Rights Reserved.
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作品の概要と感想とちょっとだけ考察(ネタバレあり)

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女優の姉を持ち、自身も女優を目指すシー。
姉の出演映画を女友達と観にいった彼女は、彼氏のアオフがほかの女性と一緒にいる場に遭遇。
アオフとシーは口論になる。
翌日、アオフからシーに電話が入るが、それは先日一緒にいたあの女性が自殺したというものだった──。

2010年製作、タイの作品。
原題は『My Ex 2: Haunted Lover』で、原題だとわかりやすいですが『元カノ 〜憑き纏う女〜(原題『My Ex』)』の続編です。
邦題の『元カノ Death』は何だか急に投げやりになった感じで、どした?話聞こか?と心配になります。

登場人物の名前の表記は、サイトによっては主人公シーの元カレが「アオフ」だったり「アオ」だったり、転落死したアオフの元カノが「イン」だったり「ヤン」だったりしますが、以下では自分が観た字幕の「アオフ」「イン」で統一します。

以下、前作『元カノ 〜憑き纏う女〜』のネタバレも含まれるのでご注意ください。
前作『元カノ 〜憑き纏う女〜』については、以下の記事をご参照ください。

とはいえ、前作は「ひどい捨て方をして自殺した元カノの霊に襲われる」以上のネタバレ要素もそれほどないシンプルな構成ですし、本作は前作からストーリー的な繋がりがあるわけではありません。

しかし、本作は前作があってこそ輝く、という印象を受けました
シンプルホラーな前作による先入観を逆手に取ったミステリィ展開。
「今回は単純に女性が主人公になっただけかな?」と思わせておいて、実はシーがインを殺していたという真相。

また、純粋にホラー演出に特化されていた前作に対して、本作は作中でシーの姉ボウイが「ホラー映画なんだからそれでいいのよ。見る人を混乱させて怖がらせるの」と述べていたような、現実なのか夢や妄想だったのかがわかりづらいような演出が明らかに織り交ぜられていました
序盤では「また夢オチか」と単調さを感じてしまうのですが、それがラストの「シーも穴に落ちて死んだ、というのは夢オチ、と思わせておいて実は本当に死んでいた」というトリックの伏線にもなっていました。

「実はシーがインを殺していた」「ラストは夢オチと見せかけてやっぱりシーも本当に死んでいた」というトリックは、ホラーやミステリィ好きであれば途中で読みやすい演出だったかと思いますし、決して斬新というわけでもありません。
それでも、見せ方が上手なのと、何より前作のシンプルさがよりミスリードを助長させる要因となっていました。

本作単体で見ると決してインパクトが強いわけではありませんが、シンプルオカルトホラーだった前作から続けて観るからこそ、見事に騙されたり、本作はむしろ霊よりヒトコワ系だったという前作との路線の違いが輝いていました
製作年も、1作目が2009年、2作目が2010年と立て続けなので、当初から2部構想だったのではないかと思わせます。

余談ですが、「2の冒頭が1のエンドロールから始まる」というメタ的な構成で思い浮かぶのが『ムカデ人間』シリーズなのですが、『ムカデ人間』が2009年、『ムカデ人間2』が2010年と製作年が完全に被っており、とても面白い偶然です。
内容はあまりにも違いすぎますが。

話を戻すと、上述したような構成のため、個人的には作品の順番がわかりづらい邦題は少しもったいないように思いました
確かに内容は独立しているのでどちらから観てもネタバレや支障はないのですが、『元カノ Death』だけ観ても魅力が伝わりづらいのでは、と勝手に懸念。
原題は『My Ex』『My Ex 2: Haunted Lover』なのでわかりやすい。
本作におけるボウイ役のアチャーマ・チワニットチャパンは、前作でもボウ役(電話ボックスごと吹き飛ばされた女性)として出演していましたが、ボウは常に泣き顔だったので言われないとわかりませんでした。


というわけで、前作と合わせて嗜むのが本作の味わい方ですが、あえて単体として見ると、やや物足りなさは感じてしまいました

前半の怒涛の夢オチ続きが伏線にはなっているのですが、「どうせまた夢オチだろうな」と思って中弛みしてしまう感も否めません。
ただ、それこそしつこいほどに夢オチが繰り返されるので、夢や妄想と現実の境界線が曖昧になる感覚は好きでした。

シーを筆頭に登場人物も特に魅力的なわけではないので、人間模様が描かれても退屈であり、前作よりも上映時間は少し短いにもかかわらず冗長に感じてしまい、テンポの良さは前作の方が上回っていました
しかし、タイにおける本名とニックネームは全然関係がないというのは『THE POOL ザ・プール』で書きましたが、「エー(Ae)」「ビー(Bee)」「シー(Cee)」というニックネームはめちゃくちゃ適当に感じてしまいますが、わざとなのか偶然なのか何か意味があるのか。


登場人物で言えば、本作もまぁみんな何とも言えない方々でした

主人公のシーは言わずもがな。
前半は「何でアオフではなくシーが憑き纏われるのか?」という点が引っかかっていましたが、それにしっかりと意味があったのはすっきりポイント。
そりゃ恨まれますね

しかし、アオフもアオフでクズかったのは間違いありません
そもそものギャンブルで借金という時点で大いに問題ありですし、思い通りにならないとテーブルを蹴ったりスマホを投げたり、果てはストーカーのごとく孤島まで押しかけて復縁を迫ったりと、同情の余地はありませんでした。
スマホを投げた先がQUEENの写真でしたが、ファンに怒られるよ。
最後はシーにアクシデントも絡んで殺されてしまい、その後はこれまでの恨みを晴らさんとばかりにタコ殴りにされてしまいました。
顔面ぐっちゃぐちゃになっているのを期待したのですが、綺麗な顔のままだったので、その点はちょっと拍子抜け(オブラートに包め)。

シーの異父姉・ボウイは、何だかんだ面倒見は良かったと思いますが、幼少期と恋愛絡みの恨みは恐ろしいということでしょうか
まぁシーがカーンに惹かれているのは明らかでしたし、あの状況でカーンといちゃつくのは愚かでした。
とはいえ、幼少期の思い出も、ボウイとカーンがいちゃついていたのも、現実なのかシーの妄想なのかは定かではなく、ただシーが妄想に支配されて暴走しただけという可能性が残る不安定さが本作の魅力です。

霊となったインは、かわいそうでした。
生前の姿はほとんど描かれませんでしたが、そこそこまともそう。
箱入り娘で世間知らずそうだった点が、アオフに引っかかってしまった要因でしょうか。
首がバキっと折れる音は小気味良かったです(オブラートに包め)。
演出のためだと思いますが、野次馬だらけの中でわざわざかけられていた布を外されて死に顔を晒されたのもかわいそう。
霊となってなお、頭の怪我は悪化していっていたように見えたので、早く病院行った方が良いです。

友人のエーとビーは、ノリはちょっと面倒くさそうな感じでしたが、悪い人たちではなさそうでした。
完っ全に巻き込まれでしかないですし、インが彼女らを殺す理由もないので、これもかわいそう。
「インがホテルオーナーの娘だった」という真相に気づいたからなのかな。
でもその真相を知られることがインにとって邪魔になったとは思いませんし、前作も踏まえると、シーに精神的なダメージを与えるために友人を殺したのかもしれませんが、結局そのニュースを知らないままシーも死んでしまったので、エーとビーは無駄死にでした

ホテルオーナーのカーンは、とにかく 何だか気持ち悪かったです 胡散臭かったです。
考察するというほどではないですが、本作における大きな謎は、インがカーンの娘だったのか?という点です
「ホテルのオーナー」がカーンを指していたのかははっきりしないのですが、そうだったとすると、復讐のためにシーを招いて接近していたのか。
でも、シーがインを殺したという真相を知っていたとも思えませんし、結局は何も危害は加えていなかったので、よくわからないままでした
もっと長期的な復讐プランがあったのかもしれませんが、一番、思わせ振りな雰囲気を終始漂わせておいて、特に見せ場もなく退場した印象です。

謎で言えば、島に着いたときに回収されていた水死体もありましたが、あれはただ関係ない死体で、不吉な予兆として登場しただけかな、と思っています。


しかし、一番の謎は、エンドロール後のシーンでしょう
あのシーンで初登場した男性が、いきなりブチ切れるという驚愕の展開。
シーとの写真を飾っていましたし、役名も「Ex Boyfriend」と記載されていたので、シーの元カレであることは間違いありません。

ただ、シーが死亡したニュースを見て、バットでテレビを叩き壊すというのはあまりにも訳がわからず、ポカーンとする以外ありません
別れたあとにシーに執着していたのだとしても、テレビを壊すほどの衝動性は理解できません。
情緒大丈夫か、情緒。
シーはどうも、DV気質のある男性に好かれやすかったようです。

この点はどれだけ考えてもよくわかりません。
無理矢理考え妄想を広げると、別れたあと「シーを殺してやる」と恨みを募らせてそれを生きがいとして生きていたのに、シーが別件で死んでしまったのでブチ切れた、ぐらいでしょうか。
飛躍させれば、本作の殺人はすべてシーに捨てられたこの男が起こした事件であり、それでも怒りがおさまらない、とか。
あるいは、ただ続編などを意識した伏線かもしれませんが、2010年以降、3作目の音沙汰はなさそうです。

しかしこの名前すら出てこない男性、演じていたのは『心霊写真』で主人公のタン役を演じていたアナンダ・エヴァリンハムでした。
相変わらず格好よくて予想外の再会は嬉しかったですが、毎度まともじゃない役でかわいそうでした。

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