『ソウ4』の概要と感想(ネタバレあり)
SWATの隊長リッグが、亡きジグソウの手口と酷似したゲームの罠に落ちる。
誰に何を試されているのかも分からないまま、リッグは人質にされたふたりの刑事を救うためゲームに挑む。
一方、FBIのストラム捜査官は、ジグソウの元妻ジルへの尋問を始めるが──。
2007年製作、アメリカの作品。
原題も『SAW IV』。
本記事には、前3作『ソウ』『ソウ2』『ソウ3』のネタバレも含まれるのでご注意ください。
前作『ソウ3』については、以下の記事をご参照ください。
とにかく大好き、『ソウ』シリーズ。
……ではあるのですが、こうやって改めて一気にシリーズを追ってみると、ここまでの3作に比べて、『ソウ4』から明確に失速している感はさすがに否定できませんでした。
やはり、リー・ワネルが脚本に関わっているか否かは大きかったということでしょうか。
監督は『ソウ2』『ソウ3』に引き続きダーレン・リン・バウズマン。
脚本は『The FEAST/ザ・フィースト』のパトリック・メルトンとマーカス・ダンスタンのコンビとなりました。
ちなみにこのコンビは、『The FEAST/ザ・フィースト』シリーズやこの後の『ソウ』シリーズの他に、『ワナオトコ』『パーフェクト・トラップ』のシリーズも手掛けています。
『ソウ3』の感想で「3部作として一旦区切りとなっている」といったようなことを書きましたが、登場人物で見れば『ソウ2』から登場した警察のメンバーであるエリック、ケリー、リッグが『ソウ3』および『ソウ4』で全滅してしまったわけで、『ソウ4』は2〜4の監督を務めたダーレン・リン・バウズマンにとっての区切りとしての作品とも言えそうです。
『ソウ4』で特筆すべきは、とにかく『ソウ3』と時間軸がほぼ並行していた、という点に尽きるでしょう。
正直、終盤まではちょっといまいちではありますが、最後の怒涛の回収は本作も大好きです。
特に、ジェフが登場したあたりから。
初めて観たときには、ジェフが歩く姿を見て何がどうなっているのか一瞬理解できませんでしたが、理解した瞬間は感動しました。
時間軸のトリックや、犯人がゲームの被害者を装っていたというトリックは『ソウ2』でも使われていたわけですが、冒頭のホフマンがテープを聴くシーンの時系列が本編後であった点も含めて、見事に騙されました。
また、『ソウ3』ではアマンダが殺害したように示唆されていたので、エリック・マシューズ刑事が生きていたのも驚きでしたが、容赦ない死に様にもまた震えました。
氷で頭ガッシャーンのシーン、かなり印象に残っています。
監禁されて生き延びさせられて、あのあっけない無惨な死に様。
むしろ『ソウ3』の時点でアマンダに殺されていた方がまだマシだったのでは、とすら思ってしまいました。
ちなみに、マシューズ刑事を演じたドニー・ウォールバーグは、若い頃にはアイドル的なボーイズ・バンド「ニュー・キッズ・オン・ザ・ブロック」の一員として活躍していたようです。
俳優としては何と、『シックス・センス』の冒頭でマルコム(ブルース・ウィリス)の家に侵入した元患者・ヴィンセントを演じていたのも彼でした。
この役のために20kgほど減量したとか。
話を戻すと、『ソウ4』における見せ場はやはり終盤だけと言ってしまっても過言ではなく、そこまでは前3作ほど伏線が散りばめられているわけではありませんでした。
基本的に、リッグの猪突猛進とストラム捜査官の暴走を眺めるしかありません。
いや、それでもゲームは相変わらず凝ってますし、もちろん好きなんですけどね。
リッグは、いくら身内が犠牲になっているとはいえ、いや、だからこそ、冷静さを失ってしまうのは、SWATの隊長としていかがなものでしょうか。
ストラム捜査官は、もはや悪名高きマシューズ式と変わらない強引な取り調べでしたし、最後には1人で突っ込んでいくのも、天下のFBI捜査官の行動としては愚かとしか言いようがありませんでした。
『ソウ4』の一番の難点は、よく感想でも見かけますが、ホフマン刑事とストラム捜査官の顔の区別がつきづらい問題でしょう。
何回も観た身としてはもはや一瞬で区別がつきますが、確かに初めて観たときにはほとんど区別がつかず、かなり混乱した記憶があります。
特にホフマンはかなり本作の鍵を握っているだけに、この点はやや致命的でした。
また、2〜3と同じダーレン・リン・バウズマン監督ではあるのですが、『ソウ4』は最後の回収に限らず、前半〜中盤もわかりづらかった印象です。
終盤が初見ではわかりづらいのは、怒涛の伏線回収や情報量が多いため、シリーズ通して仕方ない部分だと思いますが、『ソウ4』は普通のストーリー部分も理解しにくく感じてしまいました。
時間軸が入り乱れているから、といった理由でわかりづらい部分もあるのですが、単純に、何が起こっているのか映像がわかりづらかったんですよね。
血の表現も、だいぶ安っぽくなってしまっていたような。
あと、これはかなり個人的な感想になりますが、ジョンに対する解釈違いをかなり感じてしまいました。
ジョンの過去、特にジルとの過去が深掘りされたのが『ソウ4』でしたが、何か、うーん、そんな感じだったのか?ジョンのイメージと違うな?という感が否めません。
ジルと接するジョンの姿も、ジルの流産で自暴自棄になるジョンの姿も、何だかちょっと違和感が。
別に神格化したいわけではないのですが、だいぶ俗っぽいというか、チープさが否めないというか。
あとあの、ジグソウ人形の原型みたいなやつは、さすがにどうかと。
生まれてくる赤ちゃんのためにあの人形を作ったのだとすると、ちょっとセンスが……。
とはいえ、ラストに「Hello Zepp」を流しながら勢いで押してくれれば、すべて許せてしまうのが信者です。
個人的にはホフマンはけっこう好きなので、最後にリッグのテープが流れる中ホフマンが立ち上がったシーンは痺れました。
まぁ、今後のホフマン無双は、ファンですらちょっとやりすぎ感は否めませんが。
色々とわかりづらいですが、冒頭のゲームで生き残ったのがアート弁護士で、マシューズやホフマンを管理していたのもアートでした。
時間内にリッグが突入してこなければ、みんな助かったわけです。
今回は、ゲームらしいゲームは最初のアート vs. 目を縫われた男のゲームと、リッグのゲームだけでした。
途中の被験者たちは、『ソウ3』のジェフのゲームと同じく、自らに選択権はない犯罪者たち。
そう考えると、全体的にゲーム性も乏しかったですが、すでにホフマンプレゼンツになっているので仕方ありません。
ホフマンは、冷静に考えてしまうと、ちょっと忙しかったですね。
リッグのゲームの準備を整えてからリッグを拉致し、バスルームに放り投げると同時にギデオン・ビルに戻り、アートが駆けつけてくる前に、かつマシューズがぎりぎり目を覚ます前に氷の上にぶら下げて、自分も縛られているフリをしたわけですからね。
などと、細かい点を考え始めると全部成り立たなくなってしまうのが『ソウ』シリーズですが。
そうだとしても、さすがにちょっとホフマンが1人で準備するのは大変だったんじゃない?と思ってしまうのは、ホフマンが犯人だった展開としてはマイナスポイントにはなってしまっていました。
それで言うと『ソウ』も単体で見れば、真ん中で寝ていたジョンがセッティングしたのは無理があると言えなくもありませんが、内側から鍵をかければ決して無理だったとは言えないのと、その後アマンダの協力があったことも明かされています。
そんなこんなで、さすがにここからは色々と粗が目立ってしまう『ソウ』シリーズ。
それでも、ひとまずは『ソウ ザ・ファイナル 3D』まで、1年に1本のペースで製作し続けてくれたとは思えないクオリティであることも間違いありません。
引き続き、愛をもって追いかけていきたいと思います。
追記
『ソウ5』(2024/08/16)
続編『ソウ5』の感想をアップしました。
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