【映画】The FEAST/ザ・フィースト(ネタバレ感想)

映画『The FEAST/ザ・フィースト』のポスター
(C)2006 The Weinstein Company, LLC. All Rights Reserved.
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作品の概要と感想(ネタバレあり)

テキサスの荒野に建つバーに、銃を持った血まみれの男が乱入してくる。
男はバーに居合わせた人々に、謎の怪物の群れが近づいて来ていることを警告。
すぐにバーの封鎖を指示するが、窓際に立った瞬間、無残にも怪物に引き裂かれてしまう──。

2006年製作、アメリカの作品。
原題は『FEAST』。
「feast」は「ごちそう」「祝宴」といった意味ですが、人間を食べるモンスター視点でもあり、テンション高めなスプラッタ・パーティを楽しむ観客視点でもあるタイトルでしょうか。

マット・デイモン、ベン・アフレックらが設立した映画製作会社がプロデュースする新人発掘オーディション番組「プロジェクト・グリーンライト」から誕生したモンスター・パニック・ムービー。

というわけで、未知のモンスターに襲われるバーの人々の奮闘を描いた作品。
それ以上でもそれ以下でもありません
エイリアンみが強く漂うモンスターの正体なんて、まったく不明。
モンスター・パニックのエンタテインメント性というはっきりした方向性に特化された、頭を空っぽにして楽しめる最高に楽しい作品でした。

印象としては、『ミスト』の規模を小さくして、鬱要素をなくしてコメディ要素をプラスしたような感じ。
バーの中での人間観系の対立なども描かれますが、『ミスト』のように深刻なものではなく、登場人物たちの個性が強すぎるがゆえのもの。

特筆すべきとしては、やはりホラーやスプラッタ映画の定番を裏切る演出でしょう。
モンスター・パニックものを初めて観る人も楽しめますし、観慣れている人もまた違った楽しみ方ができる。
そのバランスが絶妙でした。

名前すら出てこない登場人物も多かったですが、冒頭の人物紹介から光るセンスを感じさせます
意外と登場人物は多いので最初は少し混乱しますが、すぐに慣れる個性の強さ。
モンスターが来てもまったく動じず、何かしら鍵を握っていそうだった老女が、何も握っておらずまったく見せ場もなく、しかも最後の最後にはしっかり襲われてしまったの、好き。
「年寄りは伝説とか昔話とか知っている」という理由だけで問い詰められていたところも、好き。


1980〜1990年代のスプラッタ映画のオマージュ、あるいはメタ的な作品であることは間違いありません。
それは映画冒頭、四角く切り取られたまるで古い映画のような映像から始まる時点で明らかで、その演出的には、同じく古典ホラーへのリスペクトやオマージュが散りばめられた『X エックス』の冒頭もまた同じようなものでした。

要所要所で定番フラグを立てては定番を裏切った展開を見せてくれましたが、個人的に一番痺れたのは、子どもがあっさりと食べられてしまったところでした。
しかも丸呑み。
子どもは助かりがちな中、早々のタイミングで退場となってしまった時点で、誰が死に誰が生き残るのかがまったくわからなくなり、ただものではない作品であることがひしひしと伝わってきます。
それでいてコメディ要素が強いため、あまり強い不快感を抱くこともありません(ここは人によるでしょうが)。

さらに、ただそういった定番を外すというメタ的な目的のために子どもを犠牲にしたわけではなく、それが終盤で真のヒロインが目覚める伏線になっていました
速攻でヒーローが退場したところはギャグでしたが、ヒロインと思われたその奥さんも退場する、しかも仲間に撃たれて、というところも意外性がありつつ、そこから違和感なく真のヒロインの覚醒に繋がっていくという構成、とても見事でした。
我が子を想う母親の意思が受け継がれるという点においては、感動的な要素すら感じさせます。

古典的モンスター・スプラッタの様相を呈しながら、人間の性的なシーンは少なめなのも良いところ
気持ち悪いボスとお母さんの歪んだ性的関係はありましたが、若い男女がいちゃいちゃする、という定番演出はまったくなし。
一方で、モンスターが性行為したり性器を切り取られそれが跳ね回るというトンデモ下品展開があり、この点でも誰も求めていないような意外性を発揮してくれました。

また、レイティングはR15+とスプラッタとしてもそこそこ突き抜けており、安易な人体破壊だけに頼らない多様な演出も、飽きさせない要因の一つとなっていました。
特に、一番コメディ要素を発揮していたビール男が、モンスターの謎の液体(?)を浴びまくったところは、ぬるぬるした感覚が必要以上にリアルで、思わず「うわぁ……」と顔を顰めました。
芋虫みたいなのがこびりついているのも、虫嫌いとしてはめちゃくちゃ気持ち悪い。


一方で難点としては、あえてだとは思いますが暗い中で揺れまくり、寄りまくりのカメラワーク
おそらく低予算であるがゆえ、特にモンスターの造形やグロシーンはそれで誤魔化していた点も多々あり、何が起こったのかわからず見返してしまったシーンが1回や2回ではありませんでした。
謎が一切明かされませんが、そういうコンセプトの作品なので、ストーリー重視の方には向いていない作品でしょう(スプラッタ映画全般そうですが)。

自由度が高すぎて、「続編なんて作りようがない」とも「いくらでも続編は作れる」とも思える作品ですが、まさかの2と3もあるようです。
しかも2と3は同時撮影だったとかで、そのあたりのやっつけ感もさすが。
「すぐに観たい!」とは思えず後回しになってしまいそうですが、せっかくなので、いつか観てみたいと思います。

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