【映画】デッド・フレンド・リクエスト(ネタバレ感想・心理学的考察)

映画『デッド・フレンド・リクエスト』のポスター
(C)2015 Wiedemann & Berg Film GmbH & Co. KG / SevenPictures Film GmbH / TOPFILM 120 (PTY) LTD
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作品の概要と感想(ネタバレあり)

(C)2015 Wiedemann & Berg Film GmbH & Co. KG / SevenPictures Film GmbH / TOPFILM 120 (PTY) LTD

SNSの「友達」が800人以上いる女子大生ローラのもとに、「友達」が0人の同級生マリーナからフレンド申請が届く。
しかし、承認した途端にマリーナがしつこく付きまとってくるようになったため、「友達」から削除すると、マリーナはショックのあまり自殺してしまい、それ以来ローラは悪夢に悩まされるように。
さらに、ローラの友人たちが次々と無残な死を遂げ、彼らの死ぬ瞬間の動画が、なぜかローラのアカウントにアップされてしまう──。

2016年製作、ドイツの作品。
原題はシンプルに『Friend Request』。

この記事を書くために、このページの一番上にも載せているポスターの画像を見て、びっくりしました。

トモダチ100人皆殺しにされていません

もう一度言います。

トモダチ100人皆殺しにされていません

「友達100人できるかな♪」にかけているのだと思いますが、邦題や日本版ポスターがめちゃくちゃなのは定番にせよ、それにしても誇大広告すぎてびっくりですね。

いや、もしかすると実は、みるみるうちに減っていったローラ(主人公)のFacebookフレンドたちは、呆れてフレンド削除したのではなく、殺されていったのだという裏設定があるのかもしれません。
だとしてもローラには800人以上友達がいたので、100人で「皆殺し」はおかしいです。

などと、日本版のポスターに翻弄されていてはB級ホラーなどは観ていられません
感想に移りましょう。


感想としては、普通に面白かったです。
シンプルにまとまっている中で、ホラーらしい演出もあり、背景もそれなりに設定されており、SNSという現代の問題も取り上げられていました。

しかし、「普通に」というところがポイントで、文字通り「普通」でした。
可もなく不可もなくというか、シンプルすぎるというか。
似たような作品、観たことがあるようなシーンが多いので、こういった系統をすでに観たことがある人は、同じような感想なのではないかと思います。
逆に、あまり観たことない人にはちょうど良さそう。

FacebookやSNSを取り扱うのも斬新というわけではなく、設定は『アンフレンデッド』に似ています。
友人たちが順番に死んでいくところも、『ファイナル・デスティネーション』などを筆頭に、最近観た中では『カウントダウン』がスマホのアプリも関連しており、一番近い印象(『カウントダウン』の方が後発ですが)。

ホラー演出も、定番というか、ジャンプスケアがほとんどだった印象です。
それだけのせいではないと思うのですが、なぜか緊張感にもいまいち乏しかったのが惜しいところ。
死に様はそれなりにバリエーションに富んでおり、面白かったです。
マリーナのタイムラインに投稿されていた画像や映像のセンスも、好き。
エンディングを含め、ちょっと独特な音楽も個人的には好みでした。

ローラは、何だかかわいそうでしたね。
安易にフレンド申請を承認したところや、嘘をついた誕生日パーティの写真をアップしたところ、問答無用でフレンド削除したところなどに落ち度はありましたが、自業自得パターンとまでは言えません
フレンド申請の承認も、フレンド数稼ぎのために見知らぬ人を承認したわけでもなく、むしろマリーナに同情にしての優しさも窺えました。

なので、誰もローラのことを信じず、フレンド数がみるみる減っていったところは、ちょっと違和感がありました。
浅い繋がりで、フレンド数だけに価値を見出すSNS文化への風刺的な側面もあったのかもしれませんが、見ている限りでは、ローラは羽目を外し過ぎているわけでもなく、普通に多くの人に好かれ信頼されそうな人物に見えました。

ただ、リアルな怖さが描かれていた点は、ストーカーと呼んで差し支えないであろうマリーナの反応でしょう。
現実では、落ち度が何もなくても悪意に巻き込まれてしまうことは多々あります。
フレンド承認が軽率だったと言うこともできますが、危ない人に関わってしまっただけで被害に遭うというのは、現実的な恐怖でした。

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考察:マリーナの目的やラストシーンの解釈など(ネタバレあり)

映画『デッド・フレンド・リクエスト』のシーン
(C)2015 Wiedemann & Berg Film GmbH & Co. KG / SevenPictures Film GmbH / TOPFILM 120 (PTY) LTD

いきなり余談ですが、↑の画像のシーン、U-NEXTの作品紹介でも使われているのですが、こんなシーンは本編中にはありませんでした。
カットされたシーンなのですかね?

マリーナの背景

孤独な大学生、マリーナ。

彼女の母親は、ムーアズグローブという小さな町に住んでいました。
しかし、その町で放火事件があり、母親は唯一の生存者になるも、意識不明の重体。
そのまま何とかマリーナの出産だけは成功したようですが、明確には描かれていませんがその後死亡したのでしょう。

彼女は、出生後には施設で育てられたようで、その後は全寮制?の学校に送られたようでした。
そこではいつも1人で、空想の世界を好み、パソコンをずっと見ていることもあったようです。
その学校で2人の男子からいじめに遭い、おそらく2人を殺害しました。
「何もついていないパソコンの黒い画面をずっと見つめていることもあった」「悪夢をもたらす子と恐れられていた」ということからは、儀式を行ったのはローラにフレンド削除されたあとですが、この頃から不思議な力があったのかもしれません

医学部らしいタイラー(ローラの彼氏)が勝手に盗み見た患者記録によると、ローラの父親はUnknown、つまり不明となっていました。

ちなみに、これは患者記録(Patient Records)であり、つまりはマリーナはかつてタイラーが通う大学医学部附属の病院を受診していたことを意味します。
せっかくのなので細かく見ておくと、一瞬映った画面に診断名も書いてあったのですが、それは以下の3つでした。

  • PSYCHOSIS:精神病
  • REACTIVE ATTACHMENT DISORDER:反応性愛着障害
  • TRICHOTILLOMANIA:抜毛症

「精神病」は、診断名として用いられるものではなく、その意味は少々わかりません。
ものすごく雑に言うと、以前は、うつ病などの軽めの精神疾患を「神経症」、統合失調症などの重い精神疾患を「精神病」と区分していたので、空想癖や不思議な力のあるマリーナを、幻覚・妄想があると捉えていたのかもしれません。

「反応性愛着障害」は、主に虐待を受けていた子どもに見られるもので、他者を過剰に警戒して恐れ、関係性の構築やコミュニケーションに困難が生じるものです。
マリーナは出生後、施設に預けられたようですが、学校などでもいじめに遭っており、安心できる環境に恵まれず、信頼できる大人ともあまり出会えないまま育ったのでしょう。

「抜毛症」は、自身の身体の毛を自分で抜いてしまうものです。
髪の毛を筆頭に、眉毛やまつ毛が多いですが、あらゆる体毛が対象になります。
自傷行為の一種でもあり、緊張や不安を感じた際に気持ちを落ち着かせるために行われます。
上述した愛着障害の人には自傷行為も多く見られ、マリーナも、頭頂部の髪がすっかりなくなるほど髪の毛を抜いてしまっていました。

マリーナの目的

マリーナがなぜローラに近づいたのか。
その目的は、友達が欲しかったからです。
ただ、なぜローラだったのかは説明がなく、わかりません
友達が多くキラキラしているローラに、一方的な憧れを抱いていたのでしょうか。

極端すぎる距離の詰め方や不安定さは、上述した愛着障害によるものとして描かれているのだろうと考えられます。
マリーナは、唯一の親友になることをローラに求めましたが、情緒不安定さに引かれてしまい、フレンド削除をされてしまいました。

そんな裏切り(とマリーナが感じる行為)により、愛情は一転、憎悪へ
まさしくストーカーの典型パターンですが、自分を見捨てた憎きローラに復讐をするため、黒鏡の前で首を吊り自分を燃やすという暗黒儀式を行い、魔女だか悪魔だかになりました。

そして、ローラの友人たちを次々と殺害し、その様子をローラのアカウントでFacebookにアップしていったのは、ローラを孤独にさせるためです。
自分と同じ苦しみを味わえ、というローラを苦しめることだけが目的であり、もはや怨念の塊です。

それにしても、死体が見つかっていないのに自殺と断定して発表してしまい、ローラに疑いを向けるところなんかは、警察も大学も怠慢ですね。

コービーはなぜローラを刺した?

冒頭では、ねっとりした視線で未練がましくローラを見つめていたローラの男友達コービー。
彼はその後、まさかまさかの大活躍。
コービーがいなければ、マリーナの謎は明かされなかったと言っても過言ではないでしょう。

そんなコービーは、ローラを刺して殺そうとしました
これはコービーの意思だったのか?それともマリーナに操られて行ったのか?

廃墟を捜索中、コービーもまたマリーナとフレンドになった通知が届き、暗くなったスマホ画面を見つめてしまいます。
ローラを刺したのはそのあとであったことから、そのときにはコービーは正気を失っていた可能性が推察されます。

しかし、マリーナが操ってローラを刺したと考えると不自然です。
マリーナは、ローラに孤独の苦しみを味わせることが目的でした。
ローラを殺してしまえば、その目的は達成できなくなってしまいます。

そのため、ローラを刺したのはおそらくコービーの意思です。
異世界に連れ込まれ冷静な判断力は失っていたのかもしれませんが、驚異の精神力で正気もやや保ち、「ローラを殺せば、ローラに孤独を味わせたいというマリーナの目的は達成できなくなり、自分たちは助かる」と考え、ローラを刺したのです。

廃墟の捜索前から、ローラに対して「お前は大丈夫だ(=すぐに殺されることはない)」と若干嫌味っぽく言っていたことからも、いざとなったらローラを殺す選択肢は前から考えていたのでしょう。
マリーナとフレンドになり、黒鏡を見て異世界に引き込まれ、魔女マリーナの姿を目撃したという自身に危険が迫ったことが引き金となり、実行に移したのです。

ラストシーンの解釈

親しい友人や母親を失い、浅い関係のFacebookフレンドたちにも見捨てられたローラは、マリーナの目論見通り孤独になりました
最後には、マリーナに呪われた?取り憑かれた?のかよくわかりませんが、異世界でマリーナに襲われてしまいます。

黒鏡は、異世界への入り口であるという説明でした。
パソコンやスマホの暗い画面でも代用できるんだ!?というのがびっくりポイントでしたが、当たり前のようにそれが活用され、当たり前のようにローラたちも推理していたので、深追いしてはいけません。

ローラの友人たちも、暗くなったスマホやパソコンの画面(=黒鏡)を見つめたところから、言動がおかしくなりました。
特に、入院していたイザベル(ぽっちゃり女子)は、スタッフが行き交う病院内を彷徨う様子が防犯カメラに映っていましたが、イザベル視点では無人の病院と化していました。
黒鏡と向き合ったことで、似て非なる、しかし現実ともリンクしている異世界に連れ込まれたのでしょう。

ローラも最後は、黒鏡の中へと引き摺り込まれます。
その後は突如、マリーナ化して「フレンド0人」の状態で大学にいました

マリーナはローラを引き込む前、「友達になりたいだけ。親友よ。永遠に」と言いました。
このことから、ローラは永遠に異世界に閉じ込められ、マリーナと過ごさなくてはならないことが推察されます。

では、大学に現れたマリーナ化ローラは何だったのでしょう。
ホラー的エンディングのため、あまり深い設定はないと考えるのが妥当でしょうが、考えるとすれば、もはや現実世界のローラはローラではなく、マリーナのように友達を求めて彷徨い苦しみ続ける存在にされてしまったのかな、と考えました。

ローラの魂(?)は、異世界に永遠に閉じ込められ、マリーナと過ごす。
マリーナの自殺死体が結局見つかったことからも、異世界に行っても肉体はこちら側の世界に残ることがわかります。
抜け殻となった身体は、友達を求めて彷徨い続ける、つまりはマリーナと同じく孤独に苦しみ続ける存在に。
もはやローラとしての記憶は残っておらず、周囲もローラのことを覚えていないのでしょう。

マリーナの気持ちは、もはや「友人にもなりたいけれど、許せないから孤独の苦しみも味わってほしい」という葛藤に苦しんでいたわけではないはずです。
愛情が一転、憎悪だけになってしまうと、何もかもが憎く見えてくることが少なくありません。
「永遠に親友」というのも、文字通り仲良く過ごしたいというわけではなく、まるでおもちゃのように弄び続けてやりたいという気持ちなのではないかと想像します。


もう一つの解釈は、マリーナも実は過去に同じように連れ込まれた存在であった、という可能性です。
つまり、マリーナが原点ではないという考えです。

そうなると過去の客観的資料が矛盾することになりますが、あれも改竄されたものなのかもしれません。
つまり、ローラがマリーナ化してからは、生まれつき孤独だったのも、学校でいじめに遭っていたのも、客観的資料の内容も含めて、すべてマリーナではなくローラになっているのです。
マリーナと同じ道を辿り、孤独に苦しみ、最後には友人を見つけて、その相手が今度はマリーナ化(ローラ化?)する。
そんなループパターンもありかな、と思いました。

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