作品の概要と感想(ネタバレあり)
「この動画を見た人は助けを送ってほしい」。
パナマにやって来た若者グループが、ジャングルの奥で未確認生物に襲われる。
若者たちは、惨劇の映像をSNSに投稿。
世界に助けを求めるが、果たして彼らの声は世界に届くのか──。
2014年製作、アメリカの作品。
原題は『Indigenous』で「先住の」といった意味の形容詞。
なぜ邦題が『ディープ・インフェルノ』になったのかといえば、イーライ・ロス監督の『グリーン・インフェルノ』が意識されているのは間違いないでしょう。
パリピが地元民の忠告を聞かずにジャングルに入ったら、実在したモンスターに襲われちゃった!
という、モンスターパニックものとしてはとてもスタンダートな作品です。
しかし、本作の特徴はやはり、その様子をSNSで拡散したことにあるでしょう。
それにより、ほぼリアルタイムで危機的状況が伝わり、主人公のスコットとその彼女ステフの救出に繋がりました。
……と言いたいところですが、彼らが助かったのは、地元民フリオのおかげといった方が正しいです。
軍隊のお偉いさんっぽい叔父さんの協力を取りつけられたのは、証拠となるあの動画があったからとも言えるかもしれませんが、フリオが先に動いてくれていたので、間一髪でスコットたちは助かったことになります。
真剣に忠告したのに、言うことを聞かずジャングルに突っ込んでいったスコットたち。
それなのに、同じく地元民のカルメンも一緒だったからとはいえ、危険地帯に自分も駆けつけ、必死に助けようとしてくれるフリオ、めちゃくちゃいい人でした。
正直、フリオが軍に所属する叔父に助けを求め始めたあたりでは、「実はチュパカブラは軍による実験生物なのではないか?それがバレそうになったから、焦っているのでは?」なんて裏読みをしてしまっていたのですが、まったくそんなことはなく、フリオは本当にただのいいヤツでした。
ごめん、フリオ。
とはいえ、動画によってチュパカブラの存在が世界中に明るみになってしまったので、さも「関係ありませんよ」みたいな顔をしているだけで、軍が絡んでいる可能性もなくはないかもしれません。
少し話を戻すと、動画をSNSで拡散した、というのが本作の特徴でした。
これまでも、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』などのPOVホラーや、電波も届かないような奥地でモンスターと遭遇し、あとからビデオカメラの映像だけが発見される、といったような作品はありましたが、リアルタイムではありません。
『ディープ・インフェルノ』も、動画配信ほどリアルタイムではありませんが、ほとんどリアルタイムで映像つきの状況が伝わっていました。
今までは口頭で伝承されていたような内容が、文明化によって明らかにされていく。
伝説上の生物たちも、それこそ電波の届かない場所に移り住むしかなく、なかなか生きづらい世界になっているのかもしれません。
そう考えると、もともとあのジャングルに住んでいたチュパカブラたちには、何の非もないわけです。
現実だったら、スコットたちの動画は「フェイクなのでは?」と疑う人の方が多いのではないかと思います。
というより、疑うことなく世界中の報道機関がその映像を流すというのは、むしろ心配。
終盤のテレビ局のヘリが捉えた映像は、信憑性は高いでしょうが。
スコットたちは完全に自業自得なので、助かったあともネット上で袋叩きにされてしまう気がします。
映画の内容については、残念ながら少々物足りないな、という印象でした。
上述した通り、特に意外な展開もなかったので、シンプルに襲われてシンプルに逃げ出したモンスターパニック作品。
ジャングルに到着するまでに30分ほどかかり、そこまで特に興味をそそられないパリピたちのどんちゃん騒ぎがだらだらと続くのは、冗長に感じてしまいました。
チュパカブラ、え、チュパカブラってこういう感じだったの?
と思わざるを得ないチュパカブラの造形は、とある映画の地底人に似ていました(ネタバレになるので作品名は伏せておきます)。
それはさておいても、本作のチュパカブラは生態がまったくわからず、音だけに反応するのか視力もあるのか?明るい場所も平気なのか?チュパカブラって吸血するんじゃなかったっけ?肉も食べるの?などなど、結局ほとんどが謎に包まれたままでした。
未知の生物として、それはそれで良いのかもしれませんが。
チュパカブラのおうち(洞窟)の中の絶望感は、かなり好きでした。
ただ、カルメンの首はものすごく鋭利な刃物で綺麗に切り落とされた感じでしたが、刃物も扱えるのでしょうか。
チュパカブラハウスに入り込んでしまったにもかかわらず、スコットは主人公特典で助かりますが、定番の消えかける懐中電灯の光で一瞬映り込む、ニヤニヤチュパカブラの演出も良かったです。
何で襲われなかったのかは、謎すぎますが。
謎といえば、医療キットはまだしも、当たり前のように人数分の懐中電灯を持っていたところは「えっ?」と思ってしまいました。
しかし、懐中電灯を取り出すシーンすら描かず、当たり前のように手にした状態で押し進める強引さは好き。
ちなみに、カルメンが乗っていた車は日産でした。
みんながバラバラになって1人ずつ襲われていくのは典型パターンでしたが、その理由として「スコットが俊足がすぎるから」な場面が多々あったのは、ちょっと面白かったです。
しかもスコットは、1日中ジャングルを駆け回っても余裕でステフを抱えて走り回れる超タフさ。
獣医師を目指しているというステフの設定は、チュパカブラの鳴き声を聞いて「あんな動物の声、知らない」と言っており、さり気なく(?)「これは未知の生物である」ということを説明するシーンに活かされていて面白かったです。
モンスターパニックものは好きなので、本作も悪くはないのですが、上述した似たような地底人が出てくる作品がけっこう完成度が高かったので、いまいち見劣りしてしまいます。
また、暗い上にPOV作品並みにがっくんがっくんカメラが揺れるので、何が起こっているのかわかりづらいのも難点。
何が起こっているのかわかっても、何でそうなっているのかいまいちわからないご都合主義的な展開も、難点といえば難点。
というわけで、終始もどかしさが漂う、ちょっと残念さを感じてしまった1作なのでした。
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