【映画】DASHCAM ダッシュカム(ネタバレ感想・考察)

【映画】DASHCAM ダッシュカム(ネタバレ感想・考察)
(C)2022 TOWNVIEW PRODUCTIONS. LLC. ALL RIGHT RISERVED
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作品の概要と感想(ネタバレあり)

【映画】DASHCAM ダッシュカム(ネタバレ感想・考察)
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ロサンジェルスの街を車で流しながら、視聴者からチャット欄に寄せられるコメントを即興でもじり過激なラップを披露するライブ番組「バンド・カー」を配信するミュージシャンのアニー。
コロナ禍ロックダウンの息苦しさにうんざりし、アメリカ脱出を決意。
かつてのバンド仲間でイギリスに住むストレッチをアポなし訪問する。
今や配達員として生計を立てる彼と同居の彼女を散々茶化したうえに、気まぐれで車を拝借したアニーは、大金につられて奇妙な“配達依頼”を受ける。
それは想像を絶する恐怖の幕開けであった──。

2021年製作、アメリカとイギリスの合作作品。
原題も『Dashcam』。

監督は『ズーム/見えない参加者』のロブ・サヴェッジ監督。
2020年に『ズーム/見えない参加者』、そして2021年に『DASHCAM ダッシュカム』と、立て続けにコロナ禍という時事ネタを舞台としたホラー2作品を製作。
制限も多かった中、その発想や行動力、そして工夫がすごいです。

以下、『ズーム/見えない参加者』の内容にも少しだけ触れるので、念のためご注意ください。

このブログで『ズーム/見えない参加者』の感想を書いたのは2022年5月で、つまりまだコロナ禍真っ只中でした。
その中では「いつの日かこの作品を見返したときに『うわぁ、あったあった。この雰囲気、懐かしい』と笑える日が来るといいですね」と書いていましたが、『DASHCAM ダッシュカム』を鑑賞した今回は、まさにそんな感覚になりました

いやいやまだコロナ禍は終わっていないよとか色々な意見があるかもしれませんが、一旦そういった話は置いておいて。
少なくとも、緊急事態宣言やロックダウンといった異様な雰囲気に包まれていた時期からは、それなりの時間が経過したのは間違いありません。
「懐かしい」という表現も若干語弊があるかもしれませんが、やはりあの時期は世界全体が異様だったなぁ、と感じます。
そう感じられるのは、今の自分は幸せな状況にあるということでしょう。


少し比較すると、ロックダウン下の孤独感に基づく恐怖がうまく描かれていたのが『ズーム/見えない参加者』でした
社会的な関わりが断ち切られ、家に引きこもる。
1人暮らしであれば特に、強い孤独感を抱いた時期です。

そんな中、その孤独感を和らげてくれたのがZoomやSkypeなどを中心としたビデオ通話ツールでしたが、それでも結局、物理的にはやはり1人なのです。
画面の向こうで恐ろしい現象が起ころうとも助けには行けないし、自分の身に何か起こっても助けてはもらえません(終盤、相手の家に向かったりはしていましたが)。

そんなロックダウンの閉塞感や孤独感を活かしたホラーが『ズーム/見えない参加者』だったのに対して、『DASHCAM ダッシュカム』はまったく毛色が異なります。
ロックダウン?
感染防止?
クソ食らえ!

と言わんばかりに暴れ回り、果ては国外にまで移動する主人公アニー。

いわゆる迷惑系配信者の括りですが、その過激さとある意味での信念の強さは、群を抜いていました
ロブ・サヴェッジ監督がインタビューで「従来のホラー映画にはない、攻撃的で混沌としたキャラクターを主役に据えてみたかったんだ」と述べているので、意図された極端さであったことは間違いありません。

日本の公式サイトでも「前代未聞のリアル怪物的ヒロインvs異次元の怪異、勝負の行く末を見届けよ!」と、だいぶひどい言われようです
しかも「勝負の行く末を見届けよ!」と言っておきながら「迷惑系ファイナルガール爆誕!」とも謳っています。
迷惑系ファイナルガール爆誕ということは、アニーは生き残るよというネタバレに他なりません。
別にアニーが生きるか死ぬかでヤキモキする人はいないでしょ?と言わんばかりの潔さ

良くもまぁこれだけ下品な表現が次々と出てくるなと思うほど、ぶっ飛んでいたアニーさん。
もはや縛りプレイかと思うほど下品な表現だけで会話していた印象しか残っていませんが、呼吸をするかのように次々と下品な表現を繰り出していたアニーさん。
根は明るいおバカというか、憎めない要素もありますが、決してお友達にはなりたくありません

ただ、その芯の強さは尋常ではなく、どれだけ苦境に陥ろうとも、どれだけ恐怖に直面しようとも、決して下品なラップや捨て台詞を忘れないアニーの姿は、もはやある意味では尊敬の域。
どうしても嫌いになれない……ということはなく、まぁ嫌いで終始イライラさせられましたけれど、斬新なヒロイン像だったのは間違いありません。
巻き込まれたストレッチはひたすらかわいそうでした。

そんなアニー・ハーディ役を演じていたのは、アニー・ハーディ。
つまり本名での出演です。
彼女は実際にミュージシャンであり、作中で放送されていた「バンド・カー(Band Car)」というライブ配信番組も、実際に彼女が行っているストリーミング番組をそのまま採用しているそうです。
さらに、監督のインタビューによれば、作中でのアニーのセリフはほぼすべて彼女が即興で生み出したセリフのようでした
さすがに普段はこのスタイルではないと信じていますが、異才っぷりがすごい。

内容に関しては、まさにジェットコースターホラーといった感覚でした
(アニーのせいで)次々とトラブルに巻き込まれ、訳のわからない状況に発展していき、最後にはカルトの拠点に迷い込んでからのバイオハザード。
『ズーム/見えない参加者』が「静」のホラーなら、『DASHCAM ダッシュカム』は「動」(あるいは「騒」)のコメディめいたホラーでしょう
街中を走っていたはずがいつの間にか森の中に迷い込んでいたりと、舞台の切り替わりも巧みでした。
中盤以降はもう、コロナ禍とかほぼ関係なかったですからね。

設定はよくわからにもかかわらず、アニーと展開の勢いで押し切って終わらせる力業も嫌いじゃない。
ただ、エンドロールのお下品ラップはあまりに長く、さすがに早送りしてしまいました。
あの時間、映画館で観ていたら、本編の面白さも吹き飛んでしまうほどの地獄だったかもしれません。

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考察:アンジェラやカルト集団は何だったのか?(ネタバレあり)

【映画】DASHCAM ダッシュカム(ネタバレ感想・考察)
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さて、ロクに説明もないままアンジェラを運ばされて、ロクに説明もないままアンジェラが超常的な力を発揮し、ロクに説明もないままカルト集団は首を切って、ロクに説明もないままアンジェラの体内からモンスターが登場し、ロクに説明もないままそれを退治してエンディングを迎えた本作。
果たして何が起こっていたのでしょう

この点については、ロブ・サヴェッジ監督が以下のように述べています。

実は、コメントを読むことで、アンジェラとこのカルトについての情報が得られるようにしてあるんだ。
それが楽しいイースターエッグで、真相を探る唯一の方法なんだよ。

https://dashcam-bh.com/interview/

コメントとは、画面の左下に流れていた配信の視聴者のコメントのことです。

なるほど、コメントをしっかり読み込めば良いのか。

え、えぇ……。

さすがにそのために観直すのもなぁ……。
しかも、英語得意じゃないからなぁ……。

余談ですが、ヒット作でいえば『search/サーチ』などを筆頭にパソコンやスマホの画面だけで進行していくPOV作品が最近増えていますが、情報量が多いため、すべてを追うのが大変です。
英語が苦手だとなおさら、映画館で観たら消化しきれない気がします。


それはさておき、そのために観直すのもなぁ……に話を戻します。

しかし、ここで救世主!
監督がインタビューで、何と答えを教えてくれていました。

あのシーンは、裏で進行している別のストーリーを示しているんだ。
視聴者のコメントにヒントを幾つか混ぜてあって、それを追っていけば一部が明らかになる。
カルトのメンバーたちはアンジェラの中にいる悪魔を召喚し、それをアニーに移そうとしていたんだ。
この悪魔は人間に入り込み、全てを使い尽くすと次の宿主を必要とする。
アニーが次の宿主になるはずだったというわけさ。
ただ、アニーは、そんな事情を一切知らずにひたすら恐ろしい状況に巻き込まれているだけにしたかった。
安全を求めて逃げ込んだのがまさにカルトのアジトで、さらに危険に晒されてしまうという展開はおかしくもあり、皮肉でもあるよね。

https://dashcam-bh.com/interview/

「あのシーン」というのは、カルト集団のメンバーが首を切ったシーンです。
あのシーン、不気味さがあったのでとても好き。

と、いうことらしいです。
何とまぁ、悪魔モノだったんですね

以上、本作の設定と真相でした。

……。

これで終わらせて考察を謳うのはどうなのでしょう。
ただ監督が教えてくれた答えを、公式サイトのインタビューから引用したに過ぎません。

と、真面目な良心がちくちくと痛んだので、ちょっとだけ観返してみました
褒めてください。

すると、けっこう序盤からヒントとなるものが散りばめられていました。
まぁさすがにそれだけでわからないでしょ、という感じではありますが。

優秀だったのは、@yellowhammermakerなるアカウントです
(勝手に)色々と調べてくれる特定班みたいなアカウントでした。

彼(と呼んでおきますが)は、最初にアニーがビーノ・カフェ(卵を食べ、アンジェラを託された店)に到着した時点で「Lots of UFO sightings reported near here(この近くはUFOの目撃情報が多い)」と言っていました。

アニーが最初にアンジェラを車に乗せた際には、
「Googling missin g people neaby(近くの行方不明者をググる)」
「Nobody who matches taht i can see(一致する人はいない)」
「Lots of kids missing round there tho(その周辺では多くの子どもが行方不明になっている)」
と教えてくれていました。

さらに、アニーが「ティンバーライン通り214番地に向かう」と言ったときには、「Cant find 214 TL way anywhere(ティンバーライン通り214番がどこにも見つからない)」と発言。

アンジェラがお漏らししたため(……。)トイレに立ち寄ったダイナーで女性(アンジェラの母)に襲われた際には、
「She kinda looked like Angera(彼女はアンジェラに似ていた)」
「Maybe they’re related?(親戚なのでは?)」
と、すでにこの時点で推測。

少し飛んで、森で襲いかかってきた女性が「アンジェラは私の娘だ」と言った際には、
「k I’m searching missing children(行方不明の子どもを検索する)」
「FUCK I THINK I FOUND HER(くそっ、彼女を見つけたと思う)」
「Here: www.kent.police.uk〜〜」(警察による行方不明者のページのリンクを貼る)
「“Andela Enahoro, 16, was last seen walking home from school”(アンジェラ16歳が最後に目撃されたのは学校帰りの歩いている姿)」
と特定。

他にも、@SharkBubbleBiteは、同じ森で女性が襲いかかってきたシーンで「Shes in some cult or something(彼女はカルトか何かに入っている)」と発言。

@fire&br1mは、アンジェラが母親を殺害したあたりで、
「demons satanmists(悪魔、悪魔主義者)」
「get right with god(神と和解せよ)」
とコメント。

このあたりが、オカルトの示唆だったのでしょう。
さすがにコメントや展開から全貌を理解するのは無理もありますが、情報をしっかりと収集してくれる人がいたり、勝手な推測が当たっていたりしていたところがリアルさもありました。

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