【映画】ザ・ディープ・ハウス(ネタバレ感想・考察)

映画『ザ・ディープ・ハウス』のポスター
(C)2020 -RADAR FILMS –LOGICAL PICTURES –APOLLO FILMS –5656 FILMS. All Rights Reserved.
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作品の概要と感想(ネタバレあり)

映画『ザ・ディープ・ハウス』のシーン
(C)2020 -RADAR FILMS –LOGICAL PICTURES –APOLLO FILMS –5656 FILMS. All Rights Reserved.

世界各地の廃墟などを撮影した動画で登録者数を増やしているYouTuberカップルのティナとベンは、フランスのある湖に沈められた、いわくつきの屋敷を撮影しようと現地を訪れる。
湖畔で知り合ったピエールに案内してもらい水中に潜り、不気味な屋敷にたどり着いた2人は早速、屋敷内を探索し、撮影を開始する。
しかし、そんな彼らの前に不思議な現象や幻影が次々と現れる。
危険な雰囲気を察知した2人は屋敷から出ようとするが、いつの間にか出口は塞がれていた。
空気残量も少なくなり、パニックに陥る彼らにさらなる恐怖が襲いかかる──。

2021年製作、フランスとベルギーの合作作品。
原題も『The Deep House』。

水中お化け屋敷!

というシンプルかつ最高のシチュエーション。
個人的には深海とか廃墟とかも大好きなので、本作のシチュエーションはたまらないものがありました。
しかも悪魔崇拝というダークなオカルト色も強く、屋敷内の雰囲気や小道具なども見ているだけで楽しいものでした。
そんなわけで、設定と雰囲気だけで個人的にはかなり好きな作品です。
ポスターも大好き。

しかし、「水中 × お化け屋敷」という掛け合わせ。
その発想自体は、決して斬新とまでは言えないでしょう。
では、なぜそれを実際に作った本作に斬新さがあったのか。

まず一つは、撮影技術の問題があるでしょう。
水中での撮影はかなり大変でしょうし、カメラの精度も問われ、コストや時間もかかります。
かといってCGだらけでも、違和感が生じてしまうかもしれません。

そして何より。
本作を観た方のほとんどはお察しかと思いますが、

やっぱりとにかく観づらい

水中という「シチュエーション」はホラーとの相性が抜群ですが、水中の「映像」は解像度が低く粗い映像のようでもあり、何が起こっているかもわかりづらいものがあります。
その点だけで、たとえ「水中 × お化け屋敷」の発想が過去にもあったとしても、「まぁわざわざ水中じゃなくてもいいんじゃない?」という結論に至ってしまうのも納得というものです。

しかし、そこにあえてチャレンジした本作。
しかも本作は、CGに頼らず実際に水中にセットを組んで撮影したそうです。
ある意味、水中でなければ成立しないような「必然性」はないのに、労力もコストも割いて作ってくれたのは感謝と敬意。


水中、特に深海というのは、人間にとって宇宙よりも身近でありながら、宇宙よりも未知の領域です。
水中を舞台としたホラーやスリラー自体はすでにそこそこあり、『海底47m 古代マヤの死の迷宮』は本作とも似た要素が多く見られます。
エアの残量であったり、閉鎖的な空間であったり、そこで襲われる恐怖だったり。

しかし、オカルト路線というのは、知っている限りではほとんどありません。
ただ、そこは難しいところで、オカルト系のホラーは、実際に幽霊が出てくるまでの方が緊張感があることが少なくありません。

そこは本作も同様で、屋敷の持ち主であったモンティニャック家の面々が動き出してからは、生き残れるかという緊迫感はありましたが、やはり恐怖感は薄れてしまった印象です。
マスクをつけて吊るされていたときの方が、よほど不気味でした
動き出してからは、実際に水中で撮影しているのがここではマイナスにも働き、おじいちゃんおばあちゃん(というほど高齢ではないかもですが、ピエールとサラの両親)がよたよたとゾンビのように歩いて近づいてくるシーンはシュールさが溢れ、ギャグと紙一重。

ただそこも、本作の設定は秀逸でした。
あれで「幽霊」だったら実体がありすぎですが、あくまでも肉体のある存在として描かれていました。
おかげで、彼らもまた動きづらそうだったりドア閉められたらどうしようもなかったりで、なかなか大変そうでした。
肉体が残っている理由についても、リアリティはさておいて、悪魔崇拝により封印された?呪われた?家であるという設定や、「死ではなく、永遠の眠りである」という教義?などが活かされています。
実際に水中で撮影したというのを知ってしまうと、演じていた方々の苦労も偲ばれます。


「水中だと何が起こっているかわかりづらい」という点も、メインの登場人物を2人に絞ることで、極力わかりやすさが意識されていました。
ただでさえ映像がクリアではない水中において、パニックに陥ると画面にエアが溢れ返ってさらに見え辛くなる、というのが致命的な点です。
『海底47m 古代マヤの死の迷宮』では、メインの登場人物が多かったので、そもそも「どれが誰で誰に何が起こっているのか」がわかりづらかったのですが、本作ではその点も工夫が感じられました。

とはいえ、たった2人では寂しいのも事実。
そこで登場してくれたのが、水中ドローンのトムくんです。
彼がとてもいいキャラを発揮してくれていました。

4K映像ということでさり気なく最新型のエリート感を醸し出しつつ、水中できょろきょろする姿は可愛くもあり、ソナーで探知してくれる姿は頼もしくもありました。
そんな彼の様子がおかしくなると、異常事態感が煽られます。
映像が乱れたり、ソナーで見えない何かを感知したり、ついには暴走モードで真っ赤に染まり「ここ!ここにいますよ!」と敵に寝返ったかのような動きを見せたり。
さらにはトムくんの映像はPOV視点になるので、通常の映像とのハイブリッドによるメリハリが効果的でした。

そのような工夫が見られつつ、やはり実際の水中撮影には限界もあったのか、全体的にどうしても地味さは拭えません
また、色々な要素を詰め込んだ分、中途半端になってしまっていた印象もあり、閉塞感や息苦しさは『海底47m』シリーズの方が強く描かれていますし、地上であればドローンも使って廃墟探索YouTuberというのは『コンジアム』などで溢れています。

設定と雰囲気は抜群ですが、設定や演出は既視感のあるものが多く、トータルでは物足りない印象は残ってしまいました
逆に言えば、レイティングがGということもあり、ホラー初心者にもおすすめしやすい1作かもしれません。
しかし、まさか水中でホラーの定番「ベッド下に隠れる」が見られるとは思っていなかったので、そこは高ポイント。
全体的にものすごくゲームっぽかったので、ゲーム化した方がむしろ合っていそうな気もします。

あと少し気になったのは、BGM。
作品の邪魔をすることなく不穏な感じで流れているのは良かったのですが、それが逆に、BGMなのか作中での不審な音なのかがちょっとわかりづらくなってしまっていました。


ラストに関しては、ベンはサラに襲われた際、取り込まれてしまったのだと考えられます。
ティナに腕をナイフを刺されて一旦正気に戻っていたので、単に正気を失っていただけだったようです。
しかしその直後、サラによってまさかのめっちゃ物理で殺されてしまいました

そして、ティナの最期はどうしても「間に合わないんかーい!」と突っ込まずにはいられません。
とはいえ、このラストは賛否両論でしょうが、個人的にはありでした。
冒頭のお風呂での練習シーンが伏線となり「助かりそうだ……!」と思わせつつ「間に合わないんかーい!」というある種の呆気なさ、好きです。
もしかすると、窒息ではなく呪いの影響があったのかもしれませんが(ティナの最期の体勢は十字架っぽくもありました)。

詳しくないですが、そもそも初めてのダイビングで水深30mに1時間という挑戦自体、無茶がありそうでした。
2人も結局、近年のホラーで量産されている「調子に乗ったYouTuberの成れの果て」に含まれるので、自業自得感も漂います
こういう作品の割にはまともっぽく描かれていた2人ですが、屋敷の内部を荒々しく探索したり、キリストの像も躊躇なく投げ倒していたので、やっぱりモラルは低そう
霊廟の前でトムがやっていた「浮かび上がっていく神様(?)ごっこ」は、悪ノリすぎながら、悔しいけれどちょっと楽しそうでした。

そして何より、本作の教訓はやはり、

知らない土地で知らない人についていっちゃダメ!

ですね。


本作の監督は、ジュリアン・モーリーとアレクサンドル・バスティロの2人組。
2人が監督している作品としては、『レザーフェイス 悪魔のいけにえ』は観ましたが、『屋敷女』もずっと観たいと思いながら観られていないので、近々観たいところ。

ちなみに、ベンを演じたジェームズ・ジャガーは、ミュージシャンであるミック・ジャガーの息子とのこと。
ミック・ジャガーというと『The FEAST/ザ・フィースト』が浮かんでくるようになってしまい、罪深い作品です。

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考察:水中お化け屋敷のあれこれ整理(ネタバレあり)

映画『ザ・ディープ・ハウス』のシーン
(C)2020 -RADAR FILMS –LOGICAL PICTURES –APOLLO FILMS –5656 FILMS. All Rights Reserved.

終盤、取り込まれたベンがガイドのように丁寧に説明してくれるのでそれほど考察ポイントはない本作ですが、若干ごちゃごちゃもしていたので、簡単に整理しておきます。

まず、湖に沈んでいた屋敷は、上述した通りモンティニャック家という何だか可愛らしい名前の一家が持ち主でした。
4人家族で、両親に、娘のサラ、そして息子のピエール。
しかし、その可愛らしい名前とは裏腹に、モンティニャック一家は悪魔を崇拝しており、子どもたちを攫っては撮影しながら殺し、生贄として捧げていたのです。

「悪魔崇拝(サタニズム)」と一言で言っても、その定義は多岐にわたり、一概に説明できるものではないようです。
少なくとも、本作中ではモンティニャック家がなぜ悪魔崇拝をしていたのか、また、何を目的としていたのかは説明されておらずわかりません。
本作のエンドロール後には、新たな被害者と思しき女性2人がピエールに連れられて湖に来たシーンで終わっていましたが、続編を作るとすれば、彼女たちを主人公とした物語と思わせておいて、『ザ・ディープ・ハウス ビギニング』でモンティニャック家の過去が描かれるかもしれません。

しかし彼らの悪行によって、子どもを奪われ殺された村人たちはブチ切れ
そりゃそうですね。
屋敷の中には行方不明になった子どもたちの貼り紙がたくさんありましたが、あれが彼らが攫った子どもたちなのでしょう。
かなりの数だったので、発覚まではかなりの時間がかかった(=かなりの子どもが犠牲になった)のだと考えられます。

モンティニャック家の娘のサラは、ベッドの上で殺されました。
屋敷に入って比較的すぐ、ベンがベッドのカーテン越しに目撃した人影は、サラということになるでしょう。
結局幽霊ではなかったので、何で現れて消えたのかはちょっとわかりませんが。

息子のピエールは逃げ出しましたが、両親は罰を意味する「恥辱のマスク」をつけられ、おそらく生きたまま宙吊りにされました
その地下室のドアがキリストの像で封印されていたのは、悪魔崇拝者に対する村人たちの対抗策であったのだと考えられます。

屋敷の中に迷い込んできた魚を追いかけた際、床に投げ倒したキリスト像を見てベンが「嘘だろ」と言っていましたが、これはもともとキリスト像は目を瞑っていましたが、このときには目を開いていたからでした。
理由は不明ですが、単純に「永遠の眠りから覚めてしまった」ことを示してるんですかね。
そうやって見ると「(やっべ、目覚めちゃった……)」みたいな表情にも見えてきます(?)。


屋敷のあった村は、50年ほど前に何度も洪水被害に遭い、1984年頃に河川管理の工事が始まって村人が去り、水没した、とのことでした。
これはピエールの説明ですが、ベンもネットで調べていたので、事象としては間違いないはずです。
ただ、村人が去ったのは、河川工事が始まったからではなく、モンティニャック家の事件が発覚したからかもしれません。

復讐したのち、子どもたちを失った土地を去るのは自然な流れに思いますし、村が沈むことを知っていたから、あえてモンティニャック夫妻は生かしたまま放置したとも考えられます。
また、家の周りが厳重に囲われていたのも、村人によるものでしょう。
誰かが家に入ってくればモンティニャック夫妻が助けられてしまうので、すでに誰もいない家に見せるために囲い、立ち入り禁止にしたのです。

ちなみに、ベンがネットで調べた情報では、河川工事は1984年頃と言っていました。
1980年代は、悪魔崇拝者が子どもを虐待し殺害するという悪魔的儀式虐待が疑われた時期でもあるようです。
実際にそのようなことがあったのかどうかは、悪魔崇拝者迫害のための捏造であるという可能性も高いようで定かではありませんが、いずれにせよ、モンティニャック家が行っていた儀式も、時期的にこれらがイメージされているのかと思います。

モンティニャック家の悪魔崇拝の教義?には、「死ではなく、永遠の眠りだ」というものがありました。
子どもたちを生贄として捧げる=殺害ではないという言い訳にも使われていたのではないかと考えられますが、モンティニャック家の屋敷、そしてモンティニャック夫妻の肉体がそのまま残っていたのは、あの家が「永遠の眠りについていただけ」と解釈できます

そして生き残りのピエールが、生贄としてたまに人間を送り込んでいたようです。
生贄がないと「永遠の眠り」が維持できないのかもしれません。
玄関のドアを開いた先にある壁にあった引っ掻き傷も、過去に送り込まれた生贄が逃げ出そうとして作ったものであると考えられます。
モンティニャック夫妻が壁を作り、逃げようとした子どもたちが引っ掻いた可能性もあるかもしれませんが、それにしては位置が高く感じたのと、さすがに玄関を壁で塞ぐのは自分たちが不便ですし、外から見てもあからさまに怪しい気がします。

生贄の基準は特になく、誰でも良さそうな雰囲気だったため、秘密の湖に興味を持ったダイバーを主に送り込んでいたのでしょう。
ピエールがティナをじろじろ見ていたのは、ただの女好きの可能性もありますが、姉であったサラを重ねて見ていた可能性もあります。

ベッドに人影が見えた部屋には二つベッドがあったので、サラとピエールは同じ部屋だった可能性もあり、穿った見方をすれば、サラとピエールには男女の関係があったとも考えられるかもしれません。
悪魔崇拝をしている閉鎖的な家族でもあるので、父娘、母息子の間などにも近親相姦関係があっても不思議ではないように思います。
本作ではほとんど明かされていませんが、背景が気になるモンティニャック家でした。

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『ザ・ディープ・ハウス』が好きな人におすすめの作品

『海底47m 古代マヤの死の迷宮』

本文中でも挙げましたが、海中での色々な要素によるスリルが味わえます。
サメがメインで、シリーズ2作目ですが繋がりはないので単体で楽しめます。
閉塞感や息苦しさも『ザ・ディープ・ハウス』といい勝負。

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