【映画】元カレとツイラクだけは絶対に避けたい件(ネタバレ感想・心理学的考察)

映画『元カレとツイラクだけは避けたい件』のポスター
(C)2020 STX FINANCING, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
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作品の概要と感想とちょっとだけ考察(ネタバレあり)

映画『元カレとツイラクだけは避けたい件』のシーン
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友人の結婚式に出席するため、小型セスナ機でインド洋に浮かぶ孤島に向かうことになったサラは、これから始まる空の旅に心が弾む。
しかし、セスナ機にはかつての恋人で今は気まずい関係にあるジャクソンが乗り合わせていた。
さらに離陸してほどなくして、地上から6000メートルの上空でパイロットが心臓発作を起こして急死するというアクシデントが発生。
自動操縦は機能せず、GPSや通信機器も故障し、前方には巨大乱気流が迫っているという絶体絶命の状況下で、サラとジャクソンは生き残るためある行動に出る──。

2020年製作、スウェーデンとアメリカの合作作品。
原題は『Horizon Line』で「水平線」「地平線」の意味。

『呪い襲い殺す』(原題『Ouija』)に続いて、まず「どうしたどうした邦題どうした」と突っ込まざるを得ないタイトルです。
『Horizon Line』という美しい原題の跡形もありません。
2ちゃんねる(あえて古い名称)育ちのオタクが本作を観て、パニック映画かと思いきや、久々に会っていちゃついたり再び結ばれるサラとジャクソンの熱い展開に「ゆゆゆ許せん!何がHorizon Lineだ!雰囲気ぶち壊しにしてやりますぞ!でゅふふふふ!」と思いながらつけた邦題なのでしょうか。
ちなみに、一部誇張された表現を含みましたが、差別的なニュアンスは一切ありません。
自分も紛うことなきオタクですからね。

ちなみに本作、当初の邦題は『元カレとセスナに乗ったらパイロットが死んじゃった話』だったそうです。
それで海外版権元からも許可をもらっており、プロモーションも開始していたところ、海外版権元から「ごめん、間違えて承認しちゃった。邦題変えてね」というまさかの連絡があり、『元カレとツイラクだけは絶対に避けたい件』になったとのこと。
いずれにしても、ノリは同じ感じですね。
というか『元カレとセスナに乗ったらパイロットが死んじゃった話』もそのまんますぎて笑えます。

「でゅふふふふ」は冗談として、ふざけた邦題に似合わないしっかりとした作品でしたが、この邦題、個人的には正解だったのではないかと思います
何より、一度見たらしっかりと記憶に残るタイトルです。
世界中に映画が溢れ、フライトパニックものもすでに多く存在する中で、どう注目してもらうか。
その点に頭を悩ませた結果が、この邦題なのではないでしょうか。
若干、頭を悩ませすぎてちょっとハイになり、判断力がおかしくなっていた感も否めませんが。
ツイラクしちゃいましたけれど、あれは不時着と呼べるでしょうか。
少なくとも「地平線」なんてタイトルにしていたら、確実にもっと埋もれてしまっていたでしょう。


さて、タイトルだけでこれだけああだこうだ言えるので、その点だけでもやはり間違っていなかったのだろうと思いますが、内容は上述した通り、しっかりした作りのパニック映画でした
個人的に重要なポイントは、大好きなジャウム・コレット=セラが製作総指揮。
ジャウム・コレット=セラ監督作品では『エスター』が一番好きで、『フライト・ゲーム』というフライトものもありましたが、本作は「『ロスト・バケーション』製作陣が放つ」と宣伝されている通り、『ロスト・バケーション』にとても近かった印象です。

ジャウム・コレット=セラ作品は映像の美しさが好きなポイントの一つなのですが、海や空の美しさに『ロスト・バケーション』と同じ世界観を感じました
『ロスト・バケーション』はサメをメインに据えたシチュエーション・スリラーでしたが、『ロスト・バケーション』の主人公ナンシーが海でサメの恐怖に怯えている間に、上空では本作が展開されていたと考えても違和感がないほどです。

高所の恐怖という点では『FALL/フォール』にも似た恐怖感がありますが、本作は『FALL/フォール』や『ロスト・バケーション』のようなシチュエーション・スリラーというよりは、パニック色が強めでした
途切れることなく次々と起こる問題や危機の流れは、実にお見事。
一息つけても数十秒程度で、緊張感が途切れることはありません。
嵐の雲に突っ込んだり、気絶(というか死んでしまった)パイロット代わりに操縦するところなどは、『天空の城ラピュタ』っぽさを感じました。

ただ、飛行機のことは詳しくありませんが、「さすがに無理では?」「そうはならないのでは?」というシーンや、都合の良い展開も多く見られました。
この点は、ある程度のリアルさを犠牲にしてでもエンタテインメント性が追求されていた印象です。
それがスリラーよりはパニックものとなっていた要因でもあり、スピーディな展開の維持にも繋がっていました。
最初から「この2人は助かりそう」感が強かったのも、気軽に観やすいポイントです。


一方では、「パイロットが死んでしまい、何とかして危機を乗り越えて助かる」だけの話でもあり、予想通り2人が助かることもあって、良く言えばストレート、悪く言えばあまり意外性はない展開でした。
ただ、海に墜落してからは海の恐怖がちょっと描かれたのも、個人的には好きでした。
まさにこのまま『ロスト・バケーション』に繋がりそうな雰囲気もあり、サメがちら見えしたときはテンション上がりましたが、あそこはさすがにちょっとしたサービスシーンだったようで、サメの活躍までには至りませんでした。
『ロスト・バケーション』を観ていない方には、ただの思わせぶりで肩透かしだったかもしれません。

話もわかりやすく、説明口調にならずにフレディの背景やサラが少しは操縦できる設定を提示するのも巧みでした。
フレディは登場シーンは少ないながらとても良い人だったので、死んでしまうのは最初からわかっていましたが残念でした。
しかし、上述した通りエンタメ作品なので細かいリアリティには触れませんが、持病があるのに1人で操縦したフレディは少々罪深いですね
少なくとも、発作が起こった際には薬が必要なら、水は手元に置いておきましょう。
救命器具も積んでおきましょう。

サラとジャクソンは、最初からどう見てもお互い今も好意があるので、もどかしさ抜群
サラの振り回し具合はなかなか過激で、ジャクソンは少々かわいそうでした。
そもそも、元カレと久々に会って盛り上がっちゃって寝坊して友人の結婚式に遅れるというのは、対ジャクソンに限らず、サラの自己中心性や倫理観には若干危ういものがありそうです。

お互い進む方向が異なるために別れた2人でしたが、本作の終盤、「島が見えたから引き返そう」というジャクソンに、一度は反対しながらも「あなたを信じる」と言ってジャクソンが進む道に合わせたサラ。
この選択が2人が助かる結果にも繋がりましたが、ようやく同じ道を選んだということで再び2人が結ばれるプロセスにもなっていました


しかしあえて余計なお世話で水を差しますが、このまま2人が復縁したとして、うまく続くだろうかというと微妙なところ。

一般的に知られている有名な心理学の実験の一つに「吊り橋効果」があります。
聞いたことがある方も多いかと思いますが、

被験者となる男性に不安定な吊り橋を渡ってもらう
 ↓
美しい女性の大学院生が「実験に協力してくれないか」と声をかけて簡単な心理検査を行う
 ↓
「結果を聞きたければ私に連絡してください」と連絡先を渡す

というもので、吊り橋ではなくコンクリートの安定した橋を渡らせて同様の手続きを行った場合よりも連絡が増えた、というものです。
これは「不安定な吊り橋を渡ったときのドキドキ」を「彼女に対する恋心だ」と間違って認識するために起こるとされています。

というのが非常に有名なのですが、これには実は落とし穴があり、「美しい」女性が行った場合に限るという身も蓋もない現実があります
つまり、吊り橋のドキドキを恋心と誤認するためには、それなりの条件が必要なのです。
相手に対して少なからず魅力を感じなければ、「いや、別に目の前の人は好みじゃないから、ドキドキしているのはさっきの吊り橋が怖かったからだな」と正しく処理されてしまうのです。

という小ネタを挟みましたが、もともと好意を抱き合っていたサラとジャクソンは、吊り橋効果が生じるのも簡単だったでしょう
つまり、生きるか死ぬかのスリル感が、お互いの恋愛感情を一時的に高めた可能性は大いにあります。

また、一緒に困難を乗り越えると、相手に対する連帯感が高まります
職場恋愛などもこの点が一要因となっていることが多いので、付き合ってからどちらかが異動や退職になると冷めたりすることも少なくありません。
また、不倫などでトラブルになったりしないように気をつけましょう。

もともとの感情にこれらの要素が重なり合って、サラとジャクソンのよりが戻るのは必然であったと言えるでしょう。
しかし、これらの効果は長続きするものではありません
元来の価値観が大きく異なり別々の道を歩むことになった2人なので、この後もきっと同じような衝突が生じるはずです。
そこを今度は2人で乗り越えていけるのかどうか。

以上、過去最高に余計なお世話な考察でした。

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