【映画】キャビン・フィーバー2(ネタバレ感想)

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作品の概要と感想(ネタバレあり)

高校生活のラストを飾るプロム・パーティが開かれる夜。
思いを寄せるキャシーからデートを断られたジョンは、親友アレックスと一緒にパーティに参加する。
その会場に運ばれてきたミネラルウォーターには、森のキャビンを襲った恐怖のウィルスが混入していた。
ウィルスにむしばまれた生徒たちは、次々と血まみれになって絶命していく──。

2009年製作、アメリカの作品。
原題は『Cabin Fever 2: Spring Fever』。

本記事には、前作『キャビン・フィーバー』のネタバレも含まれるのでご注意ください。
前作『キャビン・フィーバー』については、以下の記事をご参照ください。

イーライ・ロス監督のデビュー作『キャビン・フィーバー』の続編。
そして本作の監督を務めるのは、『X/エックス』『サクラメント 死の楽園』などのタイ・ウェスト監督。
『キャビン・フィーバー2』は4作目の監督作品で、当時はまだそれほど有名ではなかったと思いますが、今となっては豪華なリレーですね。
ちなみに『サクラメント 死の楽園』は、製作にイーライ・ロスが関わっています。

時間軸的には前作から直結する正統続編。
しかし毛色はだいぶ変わっており、ひたすら「汚い」「お下品」に振り切ったような作品に
個人的には正直、残念ながらちょっといまいちでした。

前作の主人公ポールは、まさかの「生きとったんかいワレェ」状態でしたが、速攻、文字通り派手に吹き飛んで退場。
続編感を強め、オープニングを盛り上げるためだけに「実は生きていました」設定にされていた感があり、ただただかわいそう。
ウィンストン保安官補も同キャストで続投で、相変わらず癖は強めで前作より出番は多かった割に影は薄めだった印象。
本作でのパンケーキ担当(?)はウィンストン保安官補でした。


舞台は山小屋から高校へ。
その時点で「cabin fever(長時間室内に閉じこもっていることで、不満やストレスが溜まった状態)」の閉塞的な要素はなく、あくまでも引き継いだのはタイトルと設定のみ。
内容や展開に関しては、思い切って大きく方向転換していた印象です。

前作『キャビン・フィーバー』の特徴は、「謎の感染症に侵されていく恐怖」でした。
そもそも序盤では、何が起こっているのかも、どう展開していくのかもわかりません。
その緊張感と不安による不穏さが根底に流れていました。

しかし、前作を経た本作では、すでに恐怖の正体は判明しています
いや、結局何の感染症なのかはわかりませんが、少なくともどういうものであるかは観客側は理解しています。
なので、じわじわした恐怖から派手なB級スプラッタに方向転換したのは、ホラーな『エイリアン』からアクションな『エイリアン2』に方向転換したような英断を感じます。

ただ、そのB級ホラー感があまりにもB級すぎて、どうしてもチープさは否めませんでした。
おそらくかなりの低予算だったのだろうと推察しますが、そこはさすがのタイ・ウェスト監督、様々な工夫を凝らしていましたが、終始わちゃわちゃしたまま、どうにも盛り上がりに欠けたまま終わってしまった印象

大きかったのは、グロ要素の質の低下でしょう。
ここも予算の都合が大きいでしょうが、派手さは増していつつも、とにかく血が飛び散るだけだったり、爪が剥がれたり手首を切断したりと、インパクトはありつつもさほど必要性があるわけではないグロシーン。
血の表現もチープになっており、吐き出す血はマーライオンを超えて迸る水流あるいはもはやビームのようになっていました。

感染症の症状も微妙に変化
前作では、生きながらにして徐々に徐々に身体が腐敗していくような、引っ掻くと容易に肉が抉れてしまう様が実におぞましかったですが、本作では進行もスピーディで、感染したと思ったらすぐに症状が表れ、と思っているうちにあれよあれよと死んでいく(症状でというより、殺されるのが多かったですが)。
そもそも作品自体がスピーディになっているので仕方ありませんが、謎の感染症の恐怖は薄めで、普通のゾンビ映画っぽくなっていた点が、一番『キャビン・フィーバー』の個性を失わせてしまっていたように感じます。

あの恐怖の汚染水がこんなに広まっちゃった!しかもまだまだ終わらないよ!的な展開はザ・続編で面白いですが、『キャビン・フィーバー』の続編という肩書きがなければ、よくあるパンデミックもの、ゾンビものの作品群に埋もれてしまう印象です。

登場人物も特徴や魅力に乏しめ
全員高校生に見えないところはご愛嬌。
それはB級ホラーの定めです。

汚さや下品さも前作から引き継いでいるポイントですが、ちょっと前面に出てきすぎている上に、あからさまというか、直球すぎたような気もします。
アニメでの表現は個人的には好きでしたが、最初も最後もアニメだったのは低予算なりの工夫でしょうか。
ラストはちょっと唐突であっけなかった感も。


全体的に、おバカなB級スプラッタホラーとして優等生な作りだったような印象を受けました。
この点、超個人的で勝手な印象ですが、前作と本作で、イーライ・ロス監督とタイ・ウェスト監督の特徴が表れているような気がします。

どちらも多くの作品を観られているわけではないので本当に勝手な印象ですが、イーライ・ロス監督は人間のおぞましさを描くのが上手いようなイメージ
『キャビン・フィーバー』も、感染症の恐怖やグロさを前面に打ち出しながらも、人間のおぞましさや醜さが浮き彫りにされていたように思います。
あと、パンケーキ少年とか、訳のわからない狂気がすごい。

対するタイ・ウェスト監督は、人間の欲望や生々しさを描くのが巧妙
『X/エックス』などで顕著ですが、その片鱗はすでに本作でも垣間見えました。
狂気やユーモアも、イーライ・ロスのように監督自身から滲み出るというより、計算されたものという印象を受けます。
そういった意味で、優等生的。

また、本作で面白かったポイントとしては、レトロ感もあります。
全体的に、1970〜1980年代のホラーをイメージしたような作りでした。
映像の質感もそうですし、序盤のトランジション(場面転換時の効果)も明らかに古めかしい感じ。

プロムのディスコ的な盛り上がり方もそうですし、実際、パーティで流れていた曲は1980年製作のカナダのホラー映画『プロムナイト』の曲が使われているそうです。
『プロムナイト』は観たことがないのですが、オマージュなどもあったのかもしれません。

前作から時間軸的に直接繋がっている続編なのに、時代背景が異なるように見える、しかし違和感がない、というのはけっこうすごくないでしょうか。
年代が明示されているわけではありませんが、本作が1980年代あたりを意識して描かれているのは明らかでしょう。
前作では携帯電話を手に「圏外だ」と言っていたので普通に製作当時(2002年)頃が舞台だと思いますが、本作では携帯電話などは登場しません。
レトロな固定電話で通話する高校生の姿は、『ハロウィン』『エルム街の悪夢』といった古典ホラー作品を彷彿とさせます。

『X/エックス』こそ、1970〜1980年代のスラッシャーホラーへの敬意と愛情が溢れつつも、現代的に、そしてタイ・ウェスト監督らしさで発展させたホラー作品と言えます。
『X/エックス』を踏まえて『キャビン・フィーバー2』を観ると、古典ホラーへの愛情は、本作の時点ですでに十分すぎるほどに感じ取れました。

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